テクノロジーによる生活の変化と未来を、小泉耕二が解説

アグリテックで、匠が作ったレベルの美味しい食材が割安で手に入る日がやってくる

サッポロビールのアグリテック
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この記事は、2017年7月13日8:05頃に放送された、J-WAVE別所哲也のMorning RadioのLifetechコーナーで取り上げた内容のおさらいと解説です。

アグリテックという言葉をご存知でしょうか?

簡単に言うと、農業をテクノロジーで進化させようという動きです。

具体的には、農地にセンサーを差し込んで、農地の状態を把握していくものや、ドローンを飛ばして広大な農地の状態を上空から把握しようとするもの、自動運転トラクターといった様々な取り組みがあります。

IoT関連で多いのが、農地にセンサーを差し込むパターンなのですが、私は取材をしていて、センサーを差し込んで土中の温度や水分量、空気中の情報を毎日集めたとして、どうやって改善していくのかがわかりませんでした。

そんな中、偶然サッポロビールが自社のワイン用のブドウ園で、品質向上と匠の技術の伝承をやっているというニュースがあったので、技術サイドをやっているPSソリューションズさんに取材に行きました。(取材の模様は、今後IoTNEWSで公開いたします)

農地のデータを収集することの難しさと懸念

お話を伺う前の悩みとしては、農地に様々なセンサーを配置するのはいいのだけど、「広大な農地のどこにセンサーを置けばよいのか」「取得したデータはどうやって活用したらよいのか」ということが、分からないということでした。

ところがある時、「データを毎年取り続けることで、天候や土中の状態と暦、収穫量などの情報を数年集めればその傾向がわかり、本来どうすれば収量が上がるのかがわかる。」とおっしゃっている方と出会い、「なるほど。でもえらい時間がかかる話をしているんだなぁ。自然相手だとテクノロジーも簡単にはいかないな。」なんて思っておりました。



一方で、日本は農業改革の面ではとても技術力が高くて、日本原産でないトマトなんかは今ではハウス栽培で一番簡単に作れる作物になっているし、糖度なんかも利用用途によって変えられるようになっていて、トマトジュース用のトマトと生で食べるトマトでは糖度も変えているという話も聞いたことがあります。

そういう話を聞いた時、「テクノロジー界隈とは別の純粋な農業分野での研究はかなり科学的に進んでいるのではないのかな?」という疑問がわいていました。

学術情報に基づく仮説検証型農業

今回、サッポロビールが行ったのが、「学術情報に基づく、仮説検証型農業」だったのです。

というのも、前述したとおり、実は農業科学の分野ってかなり研究されていて、研究施設の農地では様々な種類の農作物に関する研究がされています。

一方で、一部の作物や、それを製造する企業の取り組みを除くと、研究をしてもそれはあくまでラボベースで、実際の農地ですべて検証していくわけにもいかないので、あるいみ「工業的」ではなかったといいます。

そこで、今回のケースでは、農業科学の仮説に基づいて実際のブドウ畑の環境データを取得して、論理値と比較を行うというアプローチをとったというのです。

こうすることで、例えば「ある作物では、外気温が一定の温度を越えると病気になる」などのインプットがある状態になるので、例えば今年の夏のようにとても暑い時には、アラートがなって早く冷やすように警告が出る。

そして、冷やすといっても水をまけばよいのか、何をすればよいのか、ということも学術的アプローチや、品質が高く収量の多い農家がやっている作業を参考にして対策をシステム上でアドバイスするのです。

こうすることで、ある作物を育てる際のノウハウが「暗黙知」から「形式知」化され、多くの農家に伝承していくということが可能になるのです。

実際、学術的アプローチからの解決策と、匠の知恵による対処内容が同じだったという経験も何度もある、というのです。

これは、面白い。

可視化で終わらせない、農業IoTへ

このアプローチが唯一一つのやり方だとは思いません。ただ、他のケースでは「可視化するだけ」というのもが多いのも事実です。

確かに、高品質な作物が作れて収量の多い農家が収集したデータを見ると、見出せる知見はあるようですが、そのやり方では時間がかなりかかってしまいます。

せっかくすでにある知見があるなら、それを使ってフィールドでテストを繰り返す方が、改善の角度が高まるのは言うまでもないでしょう。

 

人口減少局面では第一次産業の就労人数もどんどん減ってきていて、「手間をかける」の一点張りではいずれジリ貧になってしまいます。

人の手間をかけるのがダメという話がしたいのではなく、人口減少という事実に目を向けて、既にある研究の成果を取り入れていくというアプローチが、新たな農業技術の革新を生み出す可能性を秘めているということに目を向けるべきでしょう。

誰しも、美味しい食材を安く手に入れたいものです。匠の力がこうやって広がっていけば、今以上に美味しい食事をお金をかけずに楽しめる日もそう遠くはないのかもしれません。

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Lifetech.todayでは、IoTNEWS代表の小泉耕二がIoTNEWSでは語れない、よもや話や、生活者に密着したテクノロジーの話をわかりやすく解説しております。

著書に、「2時間でわかる 図解IoTビジネス入門(あさ出版)」があるので、よかったら読んでみてください!

ここに書かれている見解は、あくまでも個人の見解です。

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